本研究では、スピントロニクスを研究する新しい舞台を探索するために、有機反強磁性体に注目した。反強磁性秩序が生む磁気励起であるマグノンによる熱伝導を調べるため、κ-(ET)2Cu[N(CN)2]Clおよびβ'-(ET)2ICl2における熱輸送測定を行った。その結果、両塩において反強磁性マグノンによる熱伝導が存在することを明らかにした。この結果は擬二次元有機反強磁性体において顕著な磁気熱輸送現象が生じていることを初めて捉えたものであり、本研究によって有機磁性体が反強磁性スピントロニクスに有望な材料系であることを示すことができた。
|