研究実績の概要 |
本年度は宇宙・医療の両分野において様々な機械学習を応用した新たな画像解析手法を開拓し、大きな成果が得られた。まず宇宙物理においては、3つの機械学習モデル(Dictionary Learning, U-net, Noise2noise)をフェルミ宇宙ガンマ線望遠鏡の観測データに適用した。具体的には1週間と1年後の観測データを多数ペアにして学習し、未知のデータを予測するもので、とくに U-net においては大幅な画質改善が得られた。RMSE, SSIM などを用いた評価によれば、統計量として10倍程度向上したことと等価である。さらに、天体によっては予想と実際の観測結果が大きく異なることを発見し、機械学習が活動銀河核やガンマ線バーストなど変動天体の自動検出に極めて有効であることを示した (Sato et al. 2021, ApJ)。医療イメージング応用においては、まず 20keV-1MeVまでのX線・ガンマ線を一度にイメージング可能なハイブリッドコンプトンカメラを新たに開発し、211-At など核医学治療薬のイメージングでその性能を実証した (Omata et al. 2020, Nature Sci.Rep.)。とくにコンプトンカメラにおいては描出法の原理上、コーン上のアーチファクトが発生しやすい。機械学習の適用により、これらを自動的に除去し、S/Nの大幅な向上が可能なことを示した (Sato et al. 2020, NIM-A; 2021, Jinst)。さらに、低線量かつエネルギーを弁別することで統計が不足しがちな多色X線CT画像にも機械学習を適用し、画質を大幅に向上することにも成功した (Toyoda et al.2021, Jinst)。
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