研究課題/領域番号 |
20K20938
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小宮 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30361786)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 独立成分分析 / 太古代堆積岩 / 大酸化イベント / 炭酸塩岩 / 縞状鉄鉱層 / 海洋栄養塩濃度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、過去の表層環境を解読する有効的な手法と考えられる独立成分分析を太古代の堆積岩に応用する手法の開発とその実用化である。特に本研究では、独立成分分析を各時代の堆積岩に応用し、堆積岩の化学組成の素となった端成分の化学組成を推定し、その堆積場や堆積環境の情報を読み解く方法を新規に開発することと、申請者がこれまでに採取した堆積岩の化学分析を行い、本研究で開発した独立成分分析をそれに適用することを行う。具体的には、本研究の目的を達成するため、本研究では四つのことを行う。一つ目は独立成分分析を行うためのプログラムの作成である。二つ目は現世の豊富な情報を持つ堆積物の化学組成をランダムに混合して模擬堆積岩を作り、その独立成分プログラムを用いてそれぞれの堆積岩の化学組成を再現できる最適条件を探索する。三つ目は独立成分分析の計算に用いるデータを拡充するため、小宮研究室で保有する縞状鉄鉱層や炭酸塩岩の化学組成を系統的に分析する。四つ目はそれらの分析データを用いて独立成分分析を行い、それぞれの時代や堆積場での鉄水酸化物と炭酸塩鉱物の微量元素組成を推定し、地球史を通じた海水中の生命必須微量元素組成の経年変化を得る。 2021年度は申請者がこれまでに採取した堆積岩の化学分析を行った。具体的には27億年前のピルバラフォーテスキュー層群のタンビアナ累層の炭酸塩岩の主成分元素と微量成分元素組成を分析した。特に、当時の海洋中のリン濃度を定量するために炭酸塩鉱物中のリン濃度を局所分析した。また、現世の堆積物の化学組成から模擬堆積岩を作り、独立成分プログラムを用いてそれぞれの堆積岩の化学組成を再現できる最適条件を探索することを引き続き行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、以下の四つの事柄を行う予定である。一つ目は独立成分分析のプログラムの作成である。二つ目は模擬堆積岩に独立成分プログラムを適用し、それぞれの端成分を再現できる最適条件を探索することである。三つ目は研究室で保有する縞状鉄鉱層や炭酸塩岩の化学組成を系統的に分析することである。四つ目はそれらに独立成分分析を適用し、地球史を通じた海水中の生命必須微量元素組成の経年変化を得ることである。 2021年度は、上記の二つ目と三つ目の項目を中心に研究を行った。具体的には27億年前の炭酸塩岩の主成分元素と微量成分元素組成を分析した。また、現世の堆積物の化学組成から模擬堆積岩を作り、独立成分プログラムを用いてそれぞれの堆積岩の化学組成を再現できる最適条件を探索することを行った。このように、当初計画どおりに研究を進めているので、概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本計画では、以下の3つの事柄を行う。①現世の豊富な情報を持つ堆積物の化学組成をランダムに混合して模擬堆積岩を作り、その独立成分プログラムを用いてそれぞれの堆積岩の化学組成を再現できる最適条件の探索。②小宮研究室で保有する縞状鉄鉱層や炭酸塩岩の系統的な化学組成分析。③それらの分析データに独立成分分析適用し、地球史を通じた海水中の生命必須微量元素組成の経年変化の推定。 今後は、35億年前、27億年前、25億年前の炭酸塩岩などの化学組成を系統的に分析することとを行う。そして、それらの結果をもとに、作成したプログラムを用いて、地球史を通じた海水中の生命必須微量元素組成の経年変化を推定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナ禍の問題もあり、私たちがこれまでに採取した岩石試料の化学分析を中心に研究を行なった。2022年度は、引き続き採取試料の化学分析を行うとともに、独立成分分析による解析を進める。前者には、粉末試料の作成や微量元素分析のための消耗品の購入が必要なので、主にそれに研究費を充てる予定である。
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