研究実績の概要 |
研究代表者は,木粉,竹粉,紙粉などをセルロース系増粘剤と水を混練し,押出成形により成形ができる「オールバイオマス素材」の開発を進めてきた。この素材は水を可塑剤とする粘土状素材であり,常温で押し出すことができ,乾燥により成形品が出来上がる。押出成形後,空気の注入で膨らみ,その状態で固めることができれば,原理上木や紙の中空成形が可能となる。本年度は,柔軟剤としてグリセリンを加えて,「オールバイオマス素材」に柔軟性を付与することを検討した。所定の比率で,木粉,セルロース系増粘剤,グリセリン,水を混合・混練し,真空混練押出機を用いて,シートを巻取り成形することに成功した。得られたシートの引張試験を行ったところ,グリセリンの添加量増大とともに伸びが大きくなったが,同時に引張強度が低下する関係を見出した。 このオールバイオマス素材の大きな弱点は,乾燥後の成形品を水に浸漬すると速やかに吸水し,崩壊することであった。素材調製時にクエン酸を添加し,加熱架橋することにより,成形品の崩壊性を制御することに成功し,水中で1日以上耐える成形品を作ることに成功した。この研究成果は画期的であり,すぐに論文化し,すでに発刊済みである(Tao and Nonaka, Bioresouces,16(2), 2314-2325(2021))。これにより,柔軟な素材を膨らまし,その状態で加熱により乾燥かつ架橋を進行させることにより,水中で容易に崩壊しない中空成形品を作ることができる可能性が見えてきた。
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