患者T細胞免疫系はがん細胞HLAに提示された体細胞変異由来ネオアンチゲンを認識し、がん細胞の遺伝子変異量は免疫チェックポイント阻害剤効果のバイオマーカーとして利用されている。しかし、膨大な数の体細胞変異のうち、実際に体内でT細胞反応を惹起する変異はごくわずかしかない。変異アミノ酸配列のHLA結合性はある程度アルゴリズム予測が可能であるが、これら免疫原性を規定する因子は全くわかっていない。全エクソーム解析とマススペクトロメトリー解析を組み 合わせたプロテオゲノミクスHLAリガンドーム解析によりdMMR大腸がん細胞のHLAクラスI提示ペプチドームを網羅的に解析したところ、8種類のネオアンチゲンが 検出された。しかし、反応T細胞の誘導効率は健常人PBMC間で異なっており、免疫原性に差異があると考えられる。このうち、高免疫原性ネオアンチゲンの1アミノ酸変異バリアントモデルを作成し、免疫原性との関連性を評価した。興味深いことに、バリアントモデル間での免疫原性差は、野生型ペプチドとそれぞれの変異ネオアンチゲンとの立体構造差に相関していた。野生型と構造が離れるに従って免疫原性が生まれてくる可能性が高い。これらの構造差はin silicoである程度予測可能であり、臨床的に意義のある高免疫原性ネオアンチゲンの予測方法確立につながる。本研究の成果はOncoimmunology誌をはじめとした英文誌で報告した。
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