東京電力福島第一原子力発電所では今後廃炉作業が進められる。起きてはならないことではあるが、その発生リスクがゼロではない被ばく事故に備えた対策の確立が望まれる。特に1グレイ以上の線量を被ばくした際に生じる骨髄不全や消化管障害などからなる急性放射線症候群に対する治療法の確立は急務である。本研究により、放射線によるDNA損傷をTMが緩和する可能性や、放射線傷害の結果生じるフリーラジカルによる肺障害をTMが緩和する可能性が示された。TMは抗凝固薬であるため、被ばく患者に使用すると出血を助長することが危惧される。我々が合成したTM G412Dは凝固系に作用しないため安全に使用可能である。
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