研究課題/領域番号 |
20K21634
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小薗 真吾 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40706850)
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研究分担者 |
進藤 幸治 九州大学, 大学病院, 助教 (00788432)
大内田 研宙 九州大学, 大学病院, 講師 (20452708)
久保 真 九州大学, 医学研究院, 准教授 (60403961)
安井 隆晴 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (60611283)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | 膵癌 / 腸内細菌叢 / 膵癌肝転移 |
研究実績の概要 |
本研究は、膵癌が腫瘍促進性微小環境を構築して進展していることに注目し、膵癌が固有の腸内細菌叢形成に果たすメカニズムを解明することを目的とする。 ステップ【1】としてマウスを用いて膵癌が主導する腸内細菌叢の変化について解析を行なった。膵癌自然発生マウス由来の膵癌細胞株を、近交系マウスに同所移植し、腸内細菌叢の変化について評価した。膵癌細胞を同所移植したマウスは、Controlと比較して、Fusobacterium nucleatumが増殖していることをPCR法で確認できた。Fusobacterium nucleatumは膵癌細胞の増殖を促進すると報告されており興味深い。また、腸内細菌叢の変化についてNGSによるメタゲノム解析したところ、膵癌同所移植群でプロバイオティクスとして注目されているAkkermansia muciniphilaの糞便内での減少を認めた。現在、腸内細菌叢の変化が膵腫瘍組織の分子生物学的特徴を変化させるか解析している。 ステップ【2】で膵癌同所移植により形成された腫瘍を対象に免疫組織化学染色検査を行い、細菌叢が腫瘍内に存在していることを確認した。これらの結果より、膵腫瘍内に細菌叢が存在すること、膵癌細胞が自己の進展に都合のいいように腸内細菌叢を改変している可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ステップ【1】で膵癌マウスモデルを用いた膵癌による腸内細菌叢変化の解析を行った。膵癌自然発生マウス由来の膵癌細胞株を同所移植した近交系のマウスは、Controlと比較して、膵癌細胞の増殖を促進するFusobacterium nucleatumが増殖していることをPCR法で確認できた。また、膵癌細胞同所移植群でプロバイオティクスとして注目されているAkkermansia muciniphilaの糞便内での減少をNGSによるメタゲノム解析で認めた。これらの結果から、本研究の目的である“膵癌細胞が自己の進展に都合のために腸内細菌叢の改変に関与している”可能性が示唆された。 ステップ【2】で膵癌細胞同所移植により形成された腫瘍を対象に免疫組織化学染色検査を行い、細菌叢が腫瘍内に存在していることを確認した。現在、膵癌がもたらす腸内細菌叢変化のメカニズム解明を目的として、腸内細菌叢の変化が膵腫瘍組織の分子生物学的特徴を変化させるか解析している。
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今後の研究の推進方策 |
膵癌自然発生マウスより樹立した膵癌細胞株を膵同所移植し、膵癌細胞が自己の進展に都合のいいように腸内細菌叢を改変している可能性が示唆された。 腸内細菌叢の変化が膵腫瘍組織の分子生物学的特徴を変化させるかを解析するために、膵癌細胞を同所移植した近交系のマウスに、ステップ【1】の実験デザインで得られた膵癌細胞同所移植群の糞便を移植することを計画している。膵癌細胞同所移植群の糞便移植がもたらす腸内細菌叢の変化が膵局所に与える分子生物学的変化をRT-PCR、免疫組織化学染色検査で評価し、腸間膜リンパ節や脾臓における免疫細胞浸潤の変化をフローサイトメトリーで解析する予定である。 また、糞便移植での実験が思うように進まないことに備え、ステップ【1】で膵癌がもたらす固有の腸内細菌叢形成の候補である、Fusobacterium nucleatumとAkkermansia muciniphilaを研究室で培養し、糞便移植の代用として菌の経口投与を行い、糞便移植と同様の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。 次年度はマウス費、培養用試薬、器材、研究用キットなどに使用予定である。
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