研究課題/領域番号 |
20K21659
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
國安 弘基 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (00253055)
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研究分担者 |
谷 里奈 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20783872)
岸 真五 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (50790341)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ミトコンドリアトランスファー / HMGB1 / がん細胞 / 薬剤耐性 |
研究実績の概要 |
間葉系幹細胞(MSC)はtunneling nanotubesを細胞間に形成し損傷した細胞に対しミトコンドリアを移行し再生を促進する。しかし、この詳細なメカニズムは不明である。我々は、HMGB1は損傷細胞から細胞外へ放出されMSCを走化誘引することを見出しているが、HMGB1の3つの修飾型のうち酸化型HMGB1がMSCからがん細胞へのミトコンドリア移行制御に関与していることを発見した。5-FUを投与した大腸癌細胞株HT29及びCT26をMSCと共培養したところ、MSCのミトコンドリアがHT29細胞及びCT26細胞に移行することが確認された。抗HMGB1抗体により5-FU処理によるMSCミトコンドリアの移行は抑制された。MSCを酸化型HMGB1で処理すると、nanotube形成に関与するMiro1とConnxin43の発現が増加した。さらにmitoception法により、HT29細胞へMSCのミトコンドリアを機械的に導入したところ、5-FUに対する薬剤耐性が誘導された。以上の結果から、酸化型HMGB1は、MSCからのミトコンドリア移行を介して大腸癌細胞の化学療法抵抗性を促進することが示唆された。並行して施行しているヒト骨肉腫細胞においても同様の結果が認められている。すなわち、HMGB1によりnanotube形成とミトコンドリアトランスファーが促進されること、および、抗HMGB1抗体によりミトコンドリアトランスファーが阻害されることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミトコンドリア・トランスファーの機序解明について順調に解析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、肉腫細胞を用いてin vitroおよびin vivoでミトコンドリアトランスファー阻害実験を行い、その効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物実験に関する実験を次年度に施行するため、次年度使用額が発生した。この実験については次年度に速やかに施行する予定である。
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