研究課題/領域番号 |
20K21662
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
神谷 和作 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10374159)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝性難聴 |
研究実績の概要 |
コネキシン(CX)26をコードするGJB2遺伝子の変異は日本人における遺伝性難聴の原因の20~30%を占めており世界で最も高頻度に出現する難聴原因遺伝子である。遺伝性難聴の根本的治療法は存在しないが、多能性幹細胞を用いた再生医療の応用が大きく期待されている。研究代表者らは骨髄間葉系幹細胞を用いた内耳細胞治療法開発に成功し、幹細胞治療により感音性難聴の聴力回復が可能であることを初めて実証した。また内耳ギャップ結合を形成するCX26の内耳特異的欠損マウスを開発しギャップ結合崩壊による発症機構を解明した。この異常ギャップ結合を遺伝子導入により修復することで聴力回復させる内耳遺伝子治療法を開発した。さらに最近、人工多能性幹(iPS)細胞の分化誘導により、CX26陽性内耳感覚上皮細胞が体外で作製可能であることを初めて実証した。 幹細胞から作製した内耳前駆細胞を蝸牛組織へ導入するためには蝸牛組織に適切な幹細胞ホーミングと呼ばれる細胞誘導の分子機構を理解し応用することが重要と考えられる。本研究ではこの機構を高めることにより遺伝性難聴の内耳組織へ適切な細胞を効率的に補充し、聴力を回復させる技術開発を目的とする。 本年度は移植用細胞として多能性幹細胞由来の内耳用細胞を開発するため、これまで確立した分化誘導法の改良を行った。分化誘導効率の良いマウスES細胞を用いて検討を行い、TGFbeta阻害剤が濃度依存的に三次元培養におけるCX26高発現小胞の数を増加させることを解明し、国際論文にて発表した(Fukunaga et al., Front Cell Dev Biol. 2021 ;9:602197.)。これにより効率的な分化誘導法が確立し、モデル動物への移植実験での応用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
分化誘導法に関し新たな成果を得て国際論文に掲載された。これにより効率的な分化誘導法が確立し、モデル動物への移植実験での応用が期待できるため。
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今後の研究の推進方策 |
新たに開発した分化誘導法を用いて分誘導の最適化を行い、モデル動物への移植実験の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによる緊急事態宣言により細胞培養等の業務量が減少し、それに伴う消耗品の消費も減少したため。翌年度として細胞培養との業務量を増加させる予定であり、消耗品支出は増加すると思われる。
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