研究課題
海に漂うプラスチックの破片は小さな粒子に砕けていき、マイクロプラスチックおよびナノプラスチックとなるが、これらのヒトへの影響は未だ明らかではなく、生体影響に関するリスク評価が求められている。近年、我が国では、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の罹患率が増加している。特に、潰瘍性大腸炎は、毎年約5千人ずつ患者数が増加しており、疾患の発症年齢のピークが10-20歳代であることから、生活の質の低下や発がんリスクの上昇という観点からも、我が国において克服すべき重要な消化器疾患である。炎症性腸疾患は、腸内細菌叢に対する免疫応答機構の破綻に加え、遺伝因子や食餌、ストレスなどの環境因子が関与する多因子疾患であることが示されている。最近、経口摂取されたナノ粒子は、消化管内腔の粘膜を通過し、腸管上皮細胞さらに腸管免疫に重要な役割を果たしているパイエル板のmicrofold細胞に取り込まれるとの報告がなされており、ナノ粒子は炎症性腸疾患誘導の過程で炎症反応を増強する可能性が強く示唆される。本研究では、ナノ粒子による腸管免疫機構の破綻を介する消化管炎症反応の誘導および増悪作用の機構を解明し、ナノ粒子の消化管に対するリスク評価法の確立を目指すことを目的とする。本年度は、ナノ粒子による肺への影響を検討すると同時に、ヒト腸管上皮細胞:Caco-2にポリスチレン製のマイクロとナノサイズの粒子を投与し、腸管上皮細胞の生存率とサイトカインをはじめとする炎症反応に関連する分子の発現を解析し、プラスチック粒子の消化管における炎症反応への影響を検討した。
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