前年度までに確立したブレオマイシン誘導急性期肺炎症モデルに続く2つ目の炎症モデルとして、タバコ抽出物を気管内投与するCOPDモデルマウスを作成した。ブレオマイシン処理マウスと同様に、血餅(クロット)中のNF-κB検出をはじめ、詳細な分子の挙動を突き止めることができた。これらのモデルマウスを用いた結果から、クロットバイオプシー法の広範囲に及ぶ有用性が示唆された。 延長した最終年度は、得られた結果を広く社会に周知する活動を主としていた。ブレオマイシンやタバコ抽出物投与による急性期炎症状態を惹起し、その生体影響・サインをクロットバイオプシー法で解析した成果を大学イノベーションフォーラムや、幾つかの雑誌媒体にて紹介することができた。 日本では、健康立国を目指す国策が進められ、健康寿命の維持が重要視されてきている。現在、定期健康診断による情報収集が主流だが、血液検査の限界により情報が限られているのも現状である。そこで申請者はこの課題を解決するための手法として、クロットバイオプシーという新しい検査方法を提案した。この方法により細胞内タンパク質の挙動を捉えることができるため、より詳細な個人の状態や病態を把握できる可能性を秘めているためである。実際に、クロット溶解液を用いた解析により、モデルマウスから少量の血液を用いて、その炎症が分子レベルで起きていることを証明するに至り、現在、特許申請中である。これは血液レベルで病態を追うことが可能であることを示唆する重要な開発であり、今後は具体的な疾患との関連を交えた予防医薬への発展も視野に入れている。
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