研究課題/領域番号 |
20K21849
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
植山 雅仁 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (60508373)
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研究期間 (年度) |
2020-07-30 – 2022-03-31
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キーワード | メタンフラックス / 温室効果気体収支 / 陸域生態系 / モデリング / ビッグデータ |
研究実績の概要 |
国際プロジェクト(FLUXNET-CH4)で整備された陸域生態系の全球CH4収支のデータベースを用いて、CH4収支を説明するためのモデル・パラメータ情報をモデル―データフュージョン技法により抽出することが本研究の最終目標である。データフュージョンにより観測データを、科学法則に矛盾がない形でモデルに同化させる。例えば、CH4は地下水位より下の嫌気層で光合成産物を基質としてメタン生成古細菌により生成され、生成されたCH4は、拡散、泡、植物維管束などの経路を通って大気に輸送される。これらの粗過程を数理的に表現することで、生態系間のCH4収支が異なる理由や地温、水位といった環境変数に対する生態系CH4収支の応答を粗過程に遡って評価できる。 渦相関法で観測されたメタンフラックスをプロセスの分離するための手法の高度化を進めた。メタンフラックスを嫌気層、酸化層の二層からのメタン生成、酸化、輸送を表現する簡便なモデルを開発し、モデルのパラメータをデータから制約した。プロトタイプのモデルでは、数理最適化を用いたパラメータ推定を行っていたが、今年度、ベイズ推定を用いてパラメータ推定できるスキームを開発し、統計的な不確実性を評価できるようにした。テストケースとして、北海道・美唄湿原で観測されたメタンフラックスを対象に手法を適用した。観測データは、概ね、メタンフラックスを決定するプロセスを制約できており、手法の妥当性が検証された。FLUXNET-CH4データベース内の12サイトとプロトタイプのモデルを用いて、同様のパラメータ推定を行った。データベース内にないデータを衛星データから整備し、すべてのデータについての実行環境を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渦相関法で観測されたメタンフラックスをプロセスの分離するための手法の高度化を進めた。ベイズ推定を用いてパラメータ推定できるスキームを開発し、統計的な不確実性を評価できるようにした。テストケースとして、北海道・美唄湿原で観測されたメタンフラックスを対象に手法を適用した。その結果、メタンフラックスの年々変動には、深層におけるメタン生成量が重要であること、噴出、植物の維管束を介しての輸送が重要なプロセスであることが明らかになった。この湿原の場合、生成されたメタンのうち、約半分が酸化により地中で分解されていることが示された。本手法を適用することで、単純な観測データの統計解析のみでは得られない情報と洞察を引き出すことができることが分かった。一方で、観測年数が少ない場合(例えば、観測年数が5年未満)は、十分にパラメータの制約ができないことが分かった。本手法の妥当性を示すための研究成果を公表するため、美唄湿原のテストケースについての論文を投稿中である。次年度に向けてFLUXNET-CH4データベース内の12サイトについても、モデルを実行するためのデータ整備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
FLUXNET-CH4データベースを用いて、全球の湿原を対象として、開発したスキームを適用し、様々な湿原におけるメタン放出プロセスの違いや、重要な環境因子を抽出する。 また、国際共同プロジェクトであるFLUXNET-CH4に協力し、メタンフラックスのデータ整備、整備したデータを解析することによるメタンフラックスの変動要因を解明する。これらの成果を論文として公表するほか、開発したスキームをインターネットを介して公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、予定していた海外出張がすべてキャンセルとなった。コロナ問題が改善すれば、海外での国際会議等で、今年度予定していた成果報告を次年度に発表する。次年度も海外での国際会議の参加が難しい場合は、その分の旅費を論文のオープンアクセス手数料に配分し、論文成果を広く普及することとする。
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