本研究の学術的・社会的意義は、秘教的とされた日本哲学、西田幾多郎の哲学を、多くの研究者が理解可能な仕方で内在的な問題点と固有の議論を明らかにした点にある。 とりわけ、本研究は、西田とは直接関係のないアンリ・マルディネ、大森荘蔵の哲学との比較を通じ、西田のテクストに閉じこもるのではなく、より広い視座からその哲学の特徴の明確化に努めた。本研究は、西田幾多郎の議論の特徴を出来事と媒体的・前対象的な経験の二重性に見出したが、これは日本哲学に通底する非常に大きな射程を持ったテーマである。西田だけでなく、九鬼など他の京都学派や廣松渉、大森荘蔵たちの東京学派、また他の日本の哲学者を通覧する図式を提供した。
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