研究課題/領域番号 |
20K22083
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研究機関 | 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所 |
研究代表者 |
渡辺 綾 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 地域研究センター動向分析研究グループ, 研究員 (30880455)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 内戦終結と国内政治 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、国内政治の内戦終結への影響を明らかにすることである。多くの内戦の既存研究は、国際関係分野で発展してきた国家間紛争の分析視点に依拠していることから、軍事的要因(たとえば、政府と武装勢力の相対的軍事力)に着目している。しかし、内戦が1国内で発生する事象である以上、政治の動態も内戦の終結に影響すると考えられる。特に、定期的な選挙により政治家の交代が起こる国家(たとえば、イスラエルなど)においては、選挙競合が政治アクターの内戦終結への態度や政策選好に影響すると考えられる。このような問題関心を明らかにするために、本研究では比較政治学で発展してきた「拒否権プレーヤー」の枠組みを援用して理論構築を行う。そこから得られる理論的含意を検証するために、計量分析(生存分析)と事例研究(フィリピンでの内戦終結過程)を行う。 2020年度は、計量分析を中心に取り組んだ。理論構築、仮説導出のパートを執筆するとともに、データセットを構築した。内戦終結に「拒否権」をもつ政治アクターの影響が高まるほど内戦が長期化し、また、和平交渉による終結が生じにくいという結果を得た。分析結果の頑健性を確認するとともに、英文査読誌への投稿準備のために英文校正にかけた。 また、フィリピンでのミンダナオ内戦の終結過程を事例として、和平プロセスに拒否権をもつ政治アクターを特定する。そして、彼らの和平プロセスへの支持態度が選挙にかかわる誘因にどのように規定されるのかを検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計量分析のパートに関しては、おおむね順調に進んでいる。今後は、研究成果の発表を行いフィードバックを得たうえで、国内外への査読誌に投稿していく。 一方で、新型コロナウイルスの世界的な流行により、第4四半期に予定していたフィリピンでの現地調査ができなかった。コロナがある程度収束するようであれば、2021年度に現地調査を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
計量分析に関する研究成果の発表、修正を進めるとともに、フィリピンに関する事例分析に着手する。2021年度も現地調査が実施可能か未だ不透明であるが、実施が難しい場合、現地でのRAを通じた資料入手によって論文執筆を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの世界的流行により、フィリピンでの現地調査が実施できなかったこと、それに伴い、現地調査に携行を予定した物品(ノートPCなど)を購入しなかったことが大きい。実施可能となれば、現地調査を2021年度中に行い、旅費、現地での資料調達に係る費用として支出する。
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