研究実績の概要 |
研究実績として、最終年度には2報の研究が学術誌(Journal of the Japanese and International Economies, Economics Bulletin)に掲載され、国内外の学会や研究会で研究成果の報告が行われた。また、次の新たな研究につながる事実の発見も行われた。 本研究課題では政府の財政規律の確保に向けた取り組みが様々な影響をもたらすということを明らかにした。具体的には①政府財源の共有がなされる状況では財政コモンプール問題という財政規律の弛緩が発生すること、②①の問題が発生する場合には会計操作などの財政状況の不透明性を高める行動を政府が取り得ること、③平成の大合併では自治体合併は短期的には歳出削減には寄与しなかったこと、などである。さらには未公表ながらも、人件費の削減を目指して進んできた公務員賃金の減少が民間企業の賃金などを中心とした地域経済に悪影響を及ぼすことなどについても、最終年度には研究結果が得られた。 こうした研究結果は、政府の財政規律が共有財源の存在という財政の構造的な要因によって容易く弛緩してしまい、それに伴う問題も発生することを示す一方で、政府活動そのものの歳出を削減することが地域経済などに対して歳出削減以上の損失をもたらすことを示しており、財政規律の確保は非常に難しい課題であることを明らかにしている。他方で、これらの問題の解決策についても明らかにし、あるべき財政運営のあり方についての示唆も得た。
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