本研究の目的は、欧州委員会の一次資料等を用いて、1977年の欧州共同体(EC)型付加価値税制の創設過程を明らかにすることである。EC型付加価値税制の創設を定めた理事会六次指令が策定は、租税制度の協調およびEC予算の独自財源を増大させることを通じて欧州統合を深化させるという理念が、加盟国間で共有されていたために実現した。一方、加盟国間で大きく異なる付加価値税制の課税ベースを共通化することは技術的な困難を伴い、かつ、途中からECに加盟したイギリスが、共通化された付加価値税がEC予算の独自財源となり自国の負担が増えることを懸念したため、EC型付加価値税は不完全な形で実現することになった。
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