本研究は,NHK大阪放送局に関する番組資料と制作者の声を収集・考察し,戦前戦後を通じて形成される「上方」放送文化の展開を「制作文化研究Production Studies」の側面から明らかにしたものである。その研究成果は四つにまとめられる。(一)東京/大阪という初期テレビ制作現場の「ローカリティ」を描出した。(二)男性/女性というテレビドキュメンタリー制作の「文化的な性差(ジェンダー)」を指摘した。(三)エリート/アシスタントというテレビ制作者間に生じ始める「断層」を示した。(四)放送内容に直接関わらない〈放送人〉の存在を浮上させ,「上方」放送文化の成立とナショナルな放送文化の展開を析出した。
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