研究課題/領域番号 |
20K22252
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
平松 友紀 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 助手 (60880333)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 言語行為 / コミュニケーション / 場面認識 / 記憶 / メール |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本語教育における授業活動に向け、日本語学習者が、その場の認識と、言語行為の前提となった経験などの長期的に集積された認識を自覚し、整理していくためのフレームワークを構築することである。本年度の研究成果としては、既に収集したデータから、フレームワーク作成の準備として、研究課題〈1〉ビジネス従事者の言語行為における共通認識のデータ群化、研究課題〈2〉言語行為の結果としての表現と認識との連動の検討を進めた。 〈研究課題1〉ビジネス従事者の言語行為における共通認識のデータ群化:インタビューデータから、フレームワーク作成のもととなる日本語話者の認識を検討した。具体的には、ビジネスメール作成を通した意識調査で得られたビジネス従事者の語りをデータに、ビジネス場面における「コミュニケーション観」として共通認識をまとめた。このデータ群をもとに、フレームワークの検討を進めた。 〈研究課題2〉言語行為の結果としての表現と認識との連動を検討:作成されたメール文とインタビューデータから、先行研究を踏まえ、言語行為における主体の認識と、言語行為の結果としての表現との連動を検討した。具体的には、調査協力者の認識(場面認識と言語行為の前提となる「想起記憶」)と、言語行為の結果としてのメールによる表現(内容・形式)との連動である。主体内の認識の動態性という観点から、日本語教育において主体の認識を扱う意味への考察を試みた。 研究実績として、研究課題〈1〉、研究課題〈2〉の研究論文を投稿し、2021年発行の学会誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、研究課題〈1〉、研究課題〈2〉を進め、研究結果を、待遇コミュニケーション学会『待遇コミュニケーション研究』第18巻、ビジネス日本語研究会『BJジャーナル』第4号に発表し、論文が掲載された。研究課題〈2〉の結果からは、フレームワークを作成するためのデータ群が得られた。また、主体内での認識の動態性が捉えられた研究課題〈1〉の結果からは、日本語教育の授業活動において、フレームワークを活用する目的への示唆が得られた。当初計画していた、コミュニケーション主体としての言語行為に関わる認識への自覚、整理に加え、主体内で認識が「相反」するといった点も踏まえ検討する必要があるなど、目的への捉え直しが行えた。研究課題〈3〉の追加調査の開始がやや遅れているが、研究課題〈1〉、研究課題〈2〉の進捗状況と、結果から得られたフレームワーク作成に向けた示唆を踏まえ、「(2)おおむね順調に進展している。」と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究課題〈2〉でまとめたデータをもとに、研究課題〈3〉データ群に基づくフレームワークを作成を実施する。フレームワーク作成に向け、日本語教育活動として活用するための追加調査を実施する。インタビュー調査では、日本語で仕事を行う日本語話者度に、データ群を提示し網羅的に他の観点への探索も行う。新型コロナウィルスの感染防止も考慮し、当初は予定していなかったが、オンライン調査も含め検討し実施する。それらの結果を踏まえ、フレームワークの構築を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に新型コロナウィルス感染症拡大の影響によって、インタビュー調査の実施が遅れたため、謝金や調査に関わる費用を次年度に持ち越している。また、参加する予定だった学会も延期やオンラインでの開催となり、旅費が生じなくなったため、次年度使用額が生じた。
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