研究成果の概要 |
本研究では, 統合失調症における言語性幻聴のメカニズムを解明する前段階として, 統合失調症者で音声聴取時に生じる脳内神経オシレーションに異常が生じるかについて検討を行った。音声信号の持つ遅い時間変動である振幅包絡と速い時間変動である時間微細構造に同期して生じるθオシレーションとγオシレーションの刺激同期性を分析したところ, 統合失調症者では刺激同期性のθオシレーションとγオシレーションともに刺激同期性が健常者に比べて低下し, さらに, 健常者では確かめられた両者の相関関係も確かめられなかった。また, γオシレーションの異常の度合いが思考・妄想に関わる症状の重症度を予測できることが分かった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究の成果として, 統合失調症における言語音声聴取時の神経オシレーション異常を明らかにすることが出来た。言語性幻聴のメカニズムを検討する上で, 「統合失調症者に見られる自発発火や内言の異常が言語性幻聴を引き起こすのであれば, それらの異常に関連する脳活動は実際に音声を聴いている時の脳活動と類似した特徴を持つ」という仮説を立てており, 今回の成果はこの仮説の検討の足掛かりになると考えている。さらに, γオシレーションの異常が思考・妄想に関わる症状と強く相関するという結果は, 言語音声を用いた神経オシレーションの計測が統合失調症の診断や症状の予測にも有用である可能性が示唆される。
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