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2020 年度 実施状況報告書

三倍体ドジョウの配偶子形成を可能にする特殊なゲノム挙動の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K22593
研究機関東京農業大学

研究代表者

黒田 真道  東京農業大学, 生物産業学部, 助教 (70880764)

研究期間 (年度) 2020-09-11 – 2022-03-31
キーワード倍数体 / 配偶子形成 / 染色体挙動 / FISH / 異質ゲノム / ゲノム排除
研究実績の概要

日本のドジョウには倍数性変異や生殖変異が見られ、遺伝的に分岐したA系統 (ゲノム構成:AA)、B系統 (BB)、そして二系統間交雑が起源のクローン系統 (AB) が存在する。クローン系統では2n卵 (AB) が形成され多くは雌性発生するが、A系統の精子核 (A) を偶発的に取り込むと三倍体 (AAB) が生じる。三倍体メス (AAB) は低相同性のBゲノムを排除し、残った2セット (AA) で減数分裂を行い、1n卵 (A) を作る。すなわち三倍体の生殖細胞内では、低親和性のゲノム1セットを排除する機構が存在すると考えられるが、排除が「いつ」、「どのように」行われるのかは不明であった。また、クローン二倍体と三倍体が異質なAとBゲノムをもつため、生殖細胞内に異質なゲノムが混在することで特殊な配偶子形成が生じると考えられる。一方、3ゲノムが異なる三倍体 (ABC) の配偶子形成は全く不明であった。本研究ではA・B系統の染色体識別プローブを用いたFluorescence in situ Hybridization (FISH) により、配偶子形成過程のゲノム挙動を系統ごとに追跡し、三倍体 (AAB) の卵形成過程のゲノム排除機構と、三倍体 (ABC) の配偶子形成の特徴を理解することを目的とした。
本年度はコロナ禍の影響で十分な研究活動が出来なかったが、材料として重要なクローンドジョウの採集を行い、維持できている。また本研究ではゲノムの異質性が配偶子形成に及ぼす影響を理解するため、個体のゲノム構成を把握する必要がある。本年度は、A系統特異的な反復配列を増幅するプライマーを用いたPCRにより系統識別が可能であることが判明した。同様に、各系統で増幅したRAG1遺伝子領域をターゲットに複数の制限酵素を用いたPCR-RFLPによって簡便かつ正確に二系統およびクローンを判別することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の材料である三倍体を誘起するためにはクローン二倍体から2n卵を得ることが前提となる。本年度はコロナ禍の影響で採卵が期待できる時期にサンプリングが行えず三倍体誘起が出来なかった。しかし、現在はクローンドジョウの採集と研究室での飼育が可能であり、次年度は三倍体の作出が期待できる。また、A系統由来の染色体を特異的に検出するプローブを開発するために単離されたManDra-A (A系統に特異的な反復配列) をDNAマーカーとして利用し、既存のDNAマーカーと組み合わせることで系統識別が可能であることが判明した (Kuroda et al. 2021)。また、二系統およびクローンで増幅したRAG1遺伝子領域を複数の制限酵素で断片化後、得られたフラグメントパターンの違いから簡便かつ正確な系統判別法を確立することに成功した。本研究ではゲノムの異質性が配偶子形成に及ぼす影響を明らかにすることを目的としているため、各個体における正確な系統判別、すなわちゲノム構成を識別する方法を確立できたことは研究を進めるうえで非常に重要な成果である。

今後の研究の推進方策

本年度は先述のようにコロナ禍の影響で当初計画していた研究を実施することができなかった。本年度の結果を踏まえて、次年度では確実に研究材料となる三倍体の作出を行い、十分な数のサンプルの確保をする。三倍体 (ABC) については、現在飼育中のカラドジョウ (CC) の性成熟を確認後、精子を採取して人工授精により作出する。

次年度使用額が生じた理由

当初計画していた研究がコロナ禍の影響で実施することが出来なかったため次年度使用額が生じた。本来、本年度に行う予定であった実験を次年度に行うため、当該助成金が必要である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] FISH Identifies Chromosome Differentiation Between Contemporary Genomes of Wild Types and the Ancestral Genome of Unisexual Clones of Dojo Loach, Misgurnus anguillicaudatus2021

    • 著者名/発表者名
      Masamichi Kuroda, Kiko Shibata, Takafumi Fujimoto, Masaru Murakami, Etsuro Yamaha, Katsutoshi Arai
    • 雑誌名

      Cytogenetic and Genome Research

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.1159/000515107

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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