日本のドジョウには遺伝的に分岐したA系統 (ゲノム構成:AA)、B系統 (BB) が存在する。また、北海道東部などには、二系統間の交雑起源であるクローンドジョウ (AB) が生息し、2n卵 (AB) を形成して雌性発生するが、A系統の精子核 (A) を偶発的に取り込むと三倍体 (AAB) が生じる。この三倍体メスはゲノム3セットのうち低相同性のBゲノムを排除し、残ったAAゲノムで減数分裂を行い、1n卵 (A) を作る。従って、2種類のゲノムを持つ三倍体の生殖細胞内では、低親和性のゲノム1セットを排除し、ゲノムの非相同性に起因する減数分裂異常を回避する機構が存在すると考えられる。一方、全3ゲノムが異なる三倍体 (ABC) の配偶子形成の特徴は全く不明である。異質なゲノム構成が配偶子形成に及ぼす影響を理解するためには、由来ごとに染色体挙動を追跡する必要がある。これまでにA・B系統の染色体を識別するプローブが開発されており、Fluorescence in situ Hybridization (FISH) により、二系統の染色体挙動の追跡が可能である。しかし、異質三倍体 (ABC) のCゲノム (本研究では異種のカラドジョウゲノムをCとする) を識別するプローブはなく、ゲノムの種類や存在比で三倍体の偶子形成プロセスがどう変化するのか理解できなかった。本年度はカラドジョウ特異的な反復配列の単離に成功し、この反復配列をプローブとしてFISHを行うことで、カラドジョウの全染色体のセントロメア領域にシグナルが検出された。このシグナルはドジョウ二系統の染色体では検出されず、カラドジョウゲノムを識別するプローブの開発に成功した。またカラドジョウは国外外来種であり、近年は日本各地で確認されている。今後は、カラドジョウ特異的な反復配列を種判別DNAマーカーとして利用可能か検証する。
|