研究課題
本研究では、統合失調症患者の心血管性突然死の病態解明のため、アラキドン酸カスケード由来脂質メディエーターを網羅的に調査し、その関連を明らかにすること、さらに、関連遺伝子のエピジェネティック変化の影響を調べることを目標にしている。本年度、本格的にサンプル収集を開始した。コロナ対応の影響で関連施設での収集にはかなり遅れが生じたが、当院を中心に対象となる統合失調症患者をカルテ上で選出しリクルートを行った。血液サンプルを得て、キットを用いた遺伝子の抽出、検体の保存を行うと同時に、各患者の精神症状評価、日常活動量の評価、心拍変動パワースペクトル解析による自律神経活動の測定、診療録による薬物履歴の調査を行った。研究経過中の前年度の時点で、内服薬か持効性注射剤かという抗精神病薬の剤型の違いが、心血管イベントや有害事象と関連する可能性はないかという疑問が生じた。その剤型の違いの影響は、アラキドン酸カスケード由来脂質メディエーターを介した病態の違いとも関連する可能性はあり、パリペリドン持効性注射剤およびアリピプラゾール持効性注射剤の患者のリクルートを増やし、臨床症状および自律神経活動や薬物履歴などを詳細に調査し、剤型の違いに関して、解析を行った。結果、アリピプラゾール持効性注射剤は、アリピプラゾール経口剤より自律神経活動、特に交感神経活動への悪影響が少ないことが判明した。それについて、英語論文にまとめ、国際誌にその成果を報告した。さらに、外来、入院治療中の統合失調症患者を幅広く対象とし、アラキドン酸カスケード由来脂質メディエーターと関連する代謝産物の調査のため、血漿成分の収集を続けている。研究成果について、学会のシンポジウムで発表した。さらに、統合失調症患者や抗精神病薬投与中の患者における心血管性疾患発症の病態に関する最新の知識を得るため、学会に参加し最新の情報取得に努めた。
4: 遅れている
新型コロナウイルス感染症の影響で、外来および入院治療が大幅に縮小したため、検体収集活動に支障が生じた。また、他施設への出張や入所なども制限されたため、検体収集に支障が生じた。
サンプル数を増やすため、関連施設を含めたリクルートを重点的に行い、採血、遺伝子抽出、自律神経活動測定、臨床症状の評価を併行して行う。一定数集まった時点で、アラキドン酸カスケードにまつわる代謝産物の評価のため、外注検査を行っていく。剤型の違いの病態がどのように関連するかにも着目していく。臨床症状や自律神経活動とアラキドン酸化カスケードの関連について解析を行い、最終的には、エピジェネティック因子の関連の解析を目指す。
新型コロナウイルスの影響もあり想定より対象患者のリクルートが遅れた。多くの数で解析した方が経費を削減して解析することができるため、翌年度以降にサンプル数を多く集めてまとめて解析を行いたい。また、サンプル数の遅れより、実験と解析に関わる消耗品購入も想定より生じず、次年度以降使用予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)
BMC Psychiatry
巻: 23 ページ: 135
10.1186/s12888-023-04617-y