研究課題
本研究では、統合失調症患者の心血管性突然死の病態解明のため、アラキドン酸カスケード由来脂質メディエーターを網羅的に調査し、その関連を明らかにすること、さらに、関連遺伝子のエピジェネティック変化の影響を調べることを目標にしている。本年度、本格的にサンプル収集を継続した。当院を中心に対象となる統合失調症患者をカルテ上で選出しリクルートを行った。血液サンプルを得て、キットを用いた遺伝子の抽出、検体の保存を行うと同時に、各患者の精神症状評価、日常活動量の評価、心拍変動パワースペクトル解析による自律神経活動の測定、診療録による薬物履歴の調査を行った。前年度に引き続き、薬剤剤型の影響にも着目し、アリピプラゾール持効性注射とパリペリドン持効性注射剤の影響を比較検討し、学会発表を行った。さらに、我々はこれまでの研究成果から、心血管性突然死や寿命短縮化の背景に自律神経活動異常が影響すると推測しているが、経過の中から、自律神経障害が、抗精神病薬の副作用の一つである性機能低下と関連することが考えられた。その病態を明らかにするため、ゼブラフィッシュを使用し抗精神病薬の性行動への影響を評価する実験を開始し、性ホルモン系代謝物の濃度や関連遺伝子の発現量も調査している。今後、結果を論文に投稿予定である。さらに、外来、入院治療中の統合失調症患者を幅広く対象とし、代謝産物の調査のため、血清成分の収集を続けている。研究成果について、学会のポスターセッションで発表した。さらに、統合失調症患者や抗精神病薬投与中の患者における心血管性疾患発症の病態に関する最新の知識を得るため、学会に参加し最新の情報取得に努めた。
4: 遅れている
新型コロナウイルス感染症の影響で、外来および入院治療が大幅に縮小したため、検体収集活動に支障が生じた。さらに、自身が、第3子の産休および育休があり、妊娠出産に伴い体調不良があったため研究活動に遅れが生じた。
サンプル数を増やし、ヒトにおいて、採血、遺伝子抽出、自律神経活動測定、臨床症状の評価を併行して行う。一定数集まった時点で、アラキドン酸カスケードにまつわる代謝産物の評価のため、外注検査を行っていく。また、ヒトでの解析につなげていくため、ゼブラフィッシュを用いて、自律神経活動と関連する副作用(性機能低下)と抗精神病薬の関連を明らかにし、その機序についても解明を目指す。
新型コロナウイルスの影響もあり想定より対象患者のリクルートが遅れた。また、自身が妊娠出産による体調不良があり研究推進に遅れが生じた。多くの数で解析した方が経費を削減して解析することができるため、翌年度以降にサンプル数を多く集めてまとめて解析を行いたい。また、サンプル数の遅れより、実験と解析に関わる消耗品購入も想定より生じず、次年度以降使用予定である。
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