研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、日本人乳癌研究で最大規模であるJapanese Genotype-phenotype Archiveにて公開されている7,104例の乳癌患者および23,731例の健常者のシーケンスデータの解析を実施し、高精度なhypomorph変異予測モデルの構築を進めた。変異リスト作成のために、まず1000 GenomesやgnomADで頻度が1%以上の変異を除外し、ナンセンス、スプライスサイト、挿入欠失変異は病原変異に分類した。また、ミスセンス変異についてはClinVarにて有害度が報告されている場合はそれを採用し、ClinVarにてVUSとなっている、もしくは報告がない変異をVUSとし、hypomorph変異検出パイプラインに供した。BRCA1、BRCA2、PTENなど多くの乳癌関連遺伝子では細胞株にVUSを導入し、機能解析実験を実施することでVUSsの機能評価を行う研究が世界的に進められている。これらの結果を本研究のパイプラインに組み込むことでhypomorph変異検出の精度を向上させた。病原変異が検出されている患者群、病原変異が検出されていない患者群および非罹患者群の3群で検出されたhypomorph変異の分布を比較し、統計検定を行うことでhypomorph変異が疾患に関連するか評価した。結果、いくつかの遺伝子では乳癌患者においてhypomorph変異が多く存在することが認められた。今後、本hypomorph変異予測モデルで検出されたhypomorph変異の機能解析実験を進めることで、これまで病原変異が特定されず医薬品の適用とならなかった患者に新たな治療の可能性を提示できる。
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