研究課題/領域番号 |
20K22800
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小川 光平 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (20882781)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 膵癌モデル動物 / ハイドロダイナミック遺伝子導入法 |
研究実績の概要 |
野生型ラットにハイドロダイナミック法を用いて、膵臓選択的にがん遺伝子を導入することで膵がん動物モデルの作出法の確立を目的としていた。昨年度までの検証でKRAS変異遺伝子(G12D)をラット膵臓内に遺伝子導入することで膵がん発生を認めていた。そこで、今年度はより効率的に膵がんモデル動物を作出を可能にする方法論を検証した。 具体的には、KRAS変異遺伝子にYap遺伝子を組み合わせて、4週間繰り返してハイドロダイナミック法を用いて膵臓選択的にこれら遺伝子を導入することで、全ラットにAcinar-to-ductal metaplasiaの発生を認め、その1週間後には80%のラットに pancreatic ductal adenocarcinomaの発生を確認できた。さらに肝転移、リンパ節転移、皮下転移、神経叢浸潤を伴う個体も確認できた。 以上の結果から、がん遺伝子であるKRAS変異遺伝子(G12D)およびYap遺伝子を組み合わせて、ハイドロダイナミック法を用いて膵臓選択的に遺伝子導入することで、短期間で効率的な膵がんモデル動物の作出法を確立した。これまで膵がんモデル動物の作出に関しては、報告例がなく、今回の研究成果は今後のヒト膵癌の診断さらには治療の検討に重要な基盤研究となると考えられる。 今後は、この技術を用いてラット膵がんモデルの安定した作出を進め、発癌過程で変化するタンパクやエクソソーム解析を行う事でヒト膵癌の早期診断マーカーを確立でき、新規治療法の確立へつながることに期待したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
膵がんモデル動物の作出法は確立できている。しかしハイドロダイナミック法は膵臓選択的に遺伝子導入する専門的な技術が必要であり、現在は、遺伝子導入技術の安定化および継承・共有化に時間を要しており、ラット膵がんモデルの個体数を増やしている段階である
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今後の研究の推進方策 |
ハイドロダイナミック法を用いて膵臓選択的にがん遺伝子(KRAS変異遺伝子+Yap遺伝子)を反復して導入することででラット膵がんモデルの個体数をある程度(予定では20匹)、確保する予定である。さらに発癌過程で変化する各分子の解析のため、経時的な検体採取(血清や組織など)を行い、発現変化を示したタンパクやエクソソームの同定を行う事で、膵癌の新規バイオマーカー候補の検証をしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
膵臓選択的なハイドロダイナミック法によるラット膵癌モデルの作出方法の安定化に時間を要したため、次年度使用額が生じてしまった。現在は、同方法論を用いてラット膵癌モデルの個体数を増やしている。今後は、この膵癌モデル動物を用いて、経時的な血清や組織検体を採取して、発癌過程で変化するタンパクやエクソソーム解析を行い、膵癌の早期診断マーカーの検証・確立を目指したい。
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