研究成果の概要 |
本研究では腸癌自然肝転移をきたす遺伝子改変マウスの作成を試みた。すなわち、Kras+/LSL-G12Dマウス、Pten(flox/flox)マウス、腸上皮細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するVillin-Creマウス を交配し、Kras+/LSL-G12D Pten(flox/flox) Villin-Creマウス (KPVマウス)を作成した。KPVマウスは29週で腸由来の肝転移をきたすことが確認された。KPVマウスの腸正常粘膜、腸癌、正常肝、肝転移巣の遺伝子発現を比較したところ、肝転移巣ではCsf2,Csf3/Gcsf,Pdgfb,Bv8/Prok2の発現が高値であった。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
大腸癌は癌死亡原因の上位を占め、肝臓に転移しやすい。今回我々が作成した腸癌自然肝転移マウス(KPVマウス)は従来多くの研究で使用されてきた移植モデルと比較して大腸癌の臨床像をより正確に模倣すると考えられる。また、本マウスモデルの肝転移巣ではCsf2,Csf3/Gcsf,Pdgfb,Bv8/Prok2等のサイトカインや血管新生因子の発現が亢進していた。今後、転移の成立、転移巣の増殖過程においてこれらの因子が果たす役割を明らかにする事ができれば、これらの因子が大腸癌肝転移治療のターゲットとなることが示唆された。
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