肝癌は数十年に及ぶ肝炎の帰結として肝硬変に至り、肝細胞が遺伝子変異を蓄積することで発生するが、B型肝炎ウイルス(HBV)による肝癌では肝炎に乏しい若年者もしばしば発癌し、通常と異なる発癌機序の存在が想定される。本研究ではHBV陽性の肝硬変なき肝癌9症例と肝硬変に伴う肝癌10症例を比較し、その遺伝的特徴を検討した。 肝硬変に伴う肝癌では既報通り癌関連遺伝子に多数の遺伝子変異の蓄積が認められたが、肝硬変なき肝癌では遺伝子変異が少なく、TP53遺伝子など癌抑制遺伝子を含む染色体の部分欠失が高頻度に認められた。このことからHBV陽性の肝硬変なき肝癌では染色体欠失が発癌に関与している可能性が示唆された。
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