看護師・介護スタッフ(以下、介護者とする)の腰痛有訴割合は高い。腰痛予防指針では、介護者負担を軽減する機器や道具など(以下、介護者支援機器とする)の使用を推奨しているが、その適正使用率は低い。本研究では、介護者支援機器の使用を促進し質の高いケアを提供するため、介護者の腰部への負担が大きいケアの一つである体位変換ケアに着目し、介護者支援機器の使用習熟と被介護者の快適性およびケア時間の関係について検証した。 研究は実験的環境(模擬病床)にて実施し、介護者支援機器を用いた体位変換ケアでは、機器の使用に習熟することにより、被介護者の快適性が向上すること、そしてケア時間が減少することが明らかとなった。つまり、体位変換ケア時の介護者支援機器の使用は時間的損失よりもケアの質向上に貢献するととらえることができる。この認識が広く普及することで介護者が支援機器の使用に積極的になり、介護者の負担軽減と被介護者の快適性向上と双方に有益な結果が期待できる。 なお本研究は、新型コロナウィルス感染症の流行により、臨床現場の看護師および介護スタッフを研究対象とすることが難しくなり、日常的にケアに従事していない非専門家が介護者役として研究に参加した。そのため、家族介護者等の非専門家による介護ケアが行われている在宅介護場面においても、介護者支援機器の使用促進に関する有益な示唆を得ることができたと考えられる。 日本および諸外国において少子高齢化は続き、これまで以上の厳しい人員不足が想定される。本研究では、そのような状況でも介護者を守りつつケアの質を維持・向上させていく方策のひとつである介護者支援機器の使用促進に関する有益な知見を得ることができた。今後は、体位変換ケア以外の介護者負担にも着目して、効果的な機器使用についての検討を続けていく。
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