【目的】ロボットスーツHAL(以下HAL、CYBERDYNE社製)は骨盤から足部までが一体となった装着型動作支援ロボットである。本研究は、脳性麻痺など小児特有に発症する病態に対して、小児用HALを用いた運動プログラムの開発とその有効性および効果の持続性を検証することを目指している。HALを用いた運動プログラムの効用として、関節可動域の拡大、痙性軽減、四肢の随意性向上、姿勢保持(座位・立位)能力向上・動作能力(歩行・階段昇降)の向上が期待できる。障がいを持つ小児の運動機能を従来医療よりも飛躍的に向上させる運動プログラムの開発をねらいとしている。 【最終年度(2023年度)に実施した研究の成果】未就学児~学童期の小児期疾患(脳性麻痺、先天性関節拘縮症、先天性ミオパチー)により先天性の運動障がいを呈した児3名に対し、上記の装着型動作支援ロボットを用いた運動プログラムを実施し、その効果を検証した。対象児の重症度や認知発達、生活状況、障がい特性を分析し、各症例に合わせたプログラムを立案し、介入を行った。有害事象や脱落なく介入を終了し、一部データは学会にて発表した。論文投稿に向け執筆作業を進めている。 【研究期間全体を通じて実施した研究の成果】 1)CI療法が適応とならない重度上肢痙性麻痺を呈した脳性麻痺3名に対し、単関節型のロボットスーツHALを小児の上肢に装着し、ロボットの補助を受けながら麻痺を有した上肢を集中的に動かすトレーニングのデータ解析結果について症例報告として公表した。2)下肢軟部組織解離術後(アキレス腱延長術、ハムストリングス延長術など)の脳性麻痺6名に対する両脚型HALを用いた介入のデータ解析結果について論文として公表した。3)脳性麻痺をはじめとした小児期疾患により運動機能障害を呈した9名のHAL介入後1年間のフォロアップデータについて論文として公表した。
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