研究課題/領域番号 |
20KK0017
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研究機関 | 国立民族学博物館 |
研究代表者 |
吉田 憲司 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 館長 (10192808)
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研究分担者 |
柳沢 史明 西南学院大学, 国際文化学部, 准教授 (10725732)
緒方 しらべ 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (10752751)
亀井 哲也 中京大学, 現代社会学部, 教授 (60468238)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | イメージ / 人類学 / 芸術 / 先住民 / 博物館 |
研究実績の概要 |
計画4年目の2023年度は、ようやく海外共同研究拠点であるブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)人類学博物館(MOA)とのあいだで実渡航による共同研究を実施することができた。 9月、海外共同研究拠点のUBC・MOAのスタッフを日本カナダ学会と本プロジェクトの共催の公開シンポジウムでの発表のために招聘した。シンポジウムには本科研メンバーも参加し、講演の後、他の登壇者であるカナダ北西海岸先住民のアーティストらとともに、博物館における先住民文化の展示と収集について討議した。 10月、研究代表者の吉田と研究分担者の亀井がバンクーバーに赴き、MOA現館長と前館長とで研究会合をもち、「イメージ人類学」の構想について意見を交わした。その後、UBCの研究者10名とともに国際共同研究会を開催した。吉田が「イメージ人類学」について基調講演を行った後、参加者それぞれがコメントし、「イメージ人類学」の研究対象・方法・展開の可能性について討議した。バンクーバー滞在中は、カナダ北西沿岸先住民のアート作品を展示する博物館・美術館などにおいて資料調査を実施した。その後島嶼部のハイダ・グワイへ移動し、ハイダ・グワイ博物館の館長や学芸員の協力のもと、住居址や現在のアーティストの工房などを訪問し、ハイダの人々の世界観とその表象としてのイメージの生成原理について調査を進めた。 研究分担者の柳沢は、20世紀初頭のフランス人コレクターの私邸における蒐集物の調査を行い、私的空間における趣味のプリミティヴィスムの解明にあたった。また緒方は、ナイジェリアの地方都市イレ・イフェと首都ラゴスにおいて、芸術の実践を行なうアーティスト7人を中心に調査を行なった。 12月、オンラインでの中間報告会を実施し、2月にはシェルトンMOA前館長が再来日した機会に次年度以降の計画を確認した。3月には対面にて年度末の成果報告会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでの3年間、新型コロナウイルス感染症による渡航制限および現地の政情不安によりアフリカでの各メンバーの調査の進捗ははかばかしくなく、本年度1年間でその遅れを完全に取り戻すには至っていない。 しかし、海外共同研究拠点であるブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)人類学博物館(MOA)との連携に関しては、大きく前進することができた。UBCおよびMOA関係者の3度にわたる来日(9月MOA准教授、12月MOA学芸員、2月MOA前館長)と、本科研メンバーの訪問(10月)により、共同研究機関との間での問題意識の共有とそれに基づく各メンバーの研究の推進を図ることができたと考えている。 本研究においては、アフリカやカナダのアーティスト、文化の担い手との連携も重視しており、現代社会において人々がどのような環境のもとそして意図のもとにアート制作や文化の継承を担っているかを詳らかにしようとしている。2023年度は、カナダ北西海岸部のハイダ・グワイ島、ナイジェリアの地方都市イレ・イフェと首都ラゴス、南アフリカのンデベレ地域において、現地調査を行うことができた。2024年度は、これをさらに拡大、深化させていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
計画5年目の2024年度は、本研究計画の最終年度となる。本年度には、対面およびオンラインでの共同研究を定期的に実施し、これまでのMOA、民博のそれそのぞれの研究の蓄積をもとに、「イメージ人類学」の理論的枠組みの構築を進めるとともに、その応用により、人類学における芸術理解の新たな地平を開拓する。 MOAを拠点とするカナダ北西海岸先住民の芸術行為については共同調査を継続する。また、日本側研究者によるアフリカでの現地調査も実施する。なお、政情の悪化など各国への渡航が実現できない場合には、これまで培ってきた現地研究機関との協力関係を最大限に活用し、現地研究協力者による調査を実施し、電子メールやオンライン会議を用いた情報共有を図って、研究を遂行する。さらには、調査対象地域の近隣国での調査、もしくは国外居住の調査地域出身者を対象とした調査も視野に収め、研究を遂行する。 こうして、順次蓄積した知見を、共同研究会で総合するとともに、2月には、国際シンポジウムを開催し、広く参加者を募って「イメージ」に関する知見を深め、最終的に「イメージ人類学」の創成を実現したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の世界的拡大の影響およびアフリカ諸国の政情不安定・治安悪化により、研究期間はじめの3年間にカナダおよびアフリカ諸国での現地調査ができなかったことが理由である。次年度(2024年度)も、2023年度同様に、海外共同研究と現地調査に赴く予定であり、助成金はその旅費として使用する。
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