研究課題/領域番号 |
20KK0090
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 久 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80326636)
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研究分担者 |
齋藤 伸吾 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (60343018)
山村 寛 中央大学, 理工学部, 教授 (40515334)
丁 青 中央大学, 理工学部, 助教 (70837476)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2024-03-31
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キーワード | 水系感染症 / 微生物モニタリング技術 |
研究実績の概要 |
本年度は開発済みの蛍光プローブを用いて、時間的にも空間的にも網羅的に河川水中の大腸菌濃度を測定した。札幌市の創成川の北10条(S1)、北12条(S2)、北14条(S3)、北23条(S4)、北30条(S5)、北49条(S6)の橋から河川水をサンプリングした。創成川水再生プラザからの放流水が流入する地点のすぐ下流に位置するS6においてのみ、大腸菌数が高いことが明らかとなった。公定法で求めた大腸菌数が、本研究室で開発した方法で求めた酵素活性と、大腸菌数が1000 cfu/L以上であれば相関があることがわかった。創成川流下方向の大腸菌数の変化を河川の水位と札幌市の降雨強度と比較した。2月の3回のサンプリングにおいて、創成川水再生プラザの上流(S1からS5)では、大腸菌数は2月16日や22日に高く、2月2日に最も低かった。2月2日は、前日の22時にのみ雨が降っており水位は高くない。このため、ノンポイントソースまたはCSOがなく、処理場上流で大腸菌数が低かったと考えられた。一方、2月16日は、前日から雨が降っており、サンプリング時の水位が高かった。このため、ノンポイントソースまたはCSOにより、処理場上流で大腸菌数が高くなったと考えられた。 核酸を検出する技術を開発した。本技術では病原体の核酸と特異的に結合する2種類のDNAを金ナノ粒子で修飾したDNAプローブを使う。サンプルから抽出したターゲットとDNAプローブを混合する。2つのDNAプローブがターゲットにハイブリダイズする。ターゲットはナノサイズなので2つの金ナノ粒子が互いに近接することになる。金ナノ粒子は近接すると散乱光強度が増強するので、ターゲットの濃度が高いサンプルほど散乱光強度が大きくなり、ターゲット濃度を分析できる。本年度は大腸菌O157の濃度を検出限界10^6 copies/μLで測定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症予防のため海外に赴くことはできていないが、国内で既に開発済みの蛍光プローブを用いて大腸菌を分析した。RO膜による地下水浄化実験を開始した。共同研究先のスリランカとインドネシアの研究者とは定期的に電子メールやSkypeで情報交換している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目は、研究を本格的に開始する。蛍光プローブを用いた大腸菌の分析サイトを増やす。地下水の分析も行う。若手研究者のネットワーク強化のため、代表者と若手研修者は渡航回数を増やす。日本で開発した微生物モニタリング技術を各国の若手研究者や大学院生に伝承する。引き続きオンラインで打ち合わせを行う。クリプトスポリジウム、クロストリジウム、カンピロバクター、コレラのDNAアプタマーの開発に着手する。並行してDNAプローブを用いたこれら5種の病原菌の検出を行い、すべての開発を終了する。分子生物学的手法を用いて飲料水中の微生物を網羅的に分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に購入しスリランカとインドネシアに送付する予定であった分析装置に関して、スリランカとインドネシアの受け入れ態勢が整わなかったため、2021年度に使用額を移動させ、2021年度に購入・送付することになったため、次年度使用額が生じた。
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