研究課題/領域番号 |
20KK0116
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
吉田 朋子 大阪市立大学, 人工光合成研究センター, 教授 (90283415)
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研究分担者 |
東 正信 大阪市立大学, 人工光合成研究センター, 特任准教授 (10711799)
山本 旭 京都大学, 人間・環境学研究科, 助教 (30769443)
山本 宗昭 大阪市立大学, 人工光合成研究センター, 特任助教 (50823712)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | XAFS / X線発光 |
研究実績の概要 |
イタリア側のGiovanni Mattei教授のグループは,イオンビーム照射法によって固体表面に形成された均一な金属ヘテロ構造を形成させることに成功している.更に彼らは独自の非線形発光測定システムやヨーロッパの放射光施設を利用して,このヘテロ構造は,X線励起により各局所構造や化学状態に固有の発光を与えること見出している.この知見を受け,日本側では固体中の各種欠陥についてもX線励起により固有の発光を与えるかどうかを検討した.具体的には,SiO2やAl2O3などの金属酸化物の中に含まれる様々な酸素欠陥(E’センターやB2センターなど)を対象に,紫外・可視光で励起した場合と,X線で励起した場合の発光スペクトル(可視光領域の発光)を比較したところ,各酸素欠陥に由来する同様な発光スペクトルが得られることが明らかとなった.またSiO2やAl2O3中の酸素欠陥については,SiやAlのK殻吸収端前後で励起エネルギーを変化させたところ,発光強度が吸収端前後で顕著に変化することが分かった.以上からX線発光とX線吸収を組み合わせたサイト選別型XAFSスペクトルを測定できる可能性を見出した. その一方で,同じ元素で構成された結晶構造の異なる金属酸化物を2種様々な割合で混合し,これらのXAFSスペクトルを測定した結果,特にXANES領域のスペクトルは,混合した各金属酸化物のXANESスペクトルの線形結合で再現できることが分かった.このように,XANESが,異なる局所構造を反映するスペクトルの重畳であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響で,イタリアのパドバ大学に赴くことができなかったため,イタリア側チームと連絡をとり,イオンビーム照射実験をまずイタリア側で実施し,試料への照射条件の最適化を検討した.その一方で,日本側で実験可能な発光実験を前倒して実施することにした.また新型コロナウイルスの影響で,日本における放射光実験ビームタイムも縮小されたため,従来の手法で測定したXAFSスペクトルのデータを集め,次年度に実施する定量的解析の基本概念を得ることにした.実験予定を変更しているが,前倒して実施している研究もあることから,概ね順調に実施できていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度にイタリア側と日本側で得られた実験データや知見・基本的概念に基づいて,今後はまず以下の研究内容に着手する.X線発光とX線吸収を組みあわせた独自のXAFS測定方法を開発・工夫することによって,化学状態を区別するサイト選別型XAFSを測定し,活性サイトのみのXAFSスペクトルを得ることを目指す.日本及びEU放射光施設において,X線励起に伴う発光の波長や寿命を弁別したうえで,固体光触媒の活性サイト由来の発光をモニターしながらXAFSスペクトルを得る新規測定法について検討する. また,これまでの研究において,XAFSを構成する一つの領域XANESが,異なる局所構造を反映するスペクトルの重畳であることを見出していることから,XANESの足し合わせや差し引き,波形分離という比較的簡単な定量解析法を提示し,光触媒表面のXANESを各局所構造成分に分解することを目指す.この方法により様々な局所構造が混在している光触媒表面の中から,活性サイトのXANESだけを分離抽出し,原子モデルと理論計算に基づくXANESシミュレーションから活性サイトの原子・電子構造・化学状態の情報を得る
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響により海外出張を伴う研究が実施できなかったため、国内で実施できる研究を遂行した。 次年度は2020年度に実施できなかった実験内容も併せて海外の機関で実施する。
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