研究課題/領域番号 |
20KK0118
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
越後 拓也 秋田大学, 国際資源学研究科, 准教授 (30614036)
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研究分担者 |
AGANGI ANDREA 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (20840812)
渡辺 寧 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (90358383)
荒岡 大輔 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (60738318)
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研究期間 (年度) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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キーワード | 白金族元素鉱床 / 金-アンチモン鉱床 / ブッシュフェルト複合岩体 / マーチソン緑色岩帯 / バーバートン緑色岩帯 |
研究実績の概要 |
今年度は南アフリカ共和国ブッシュフェルド岩体北縁に位置するPlatreef堆積岩中のNi-Co-PGE鉱化作用を明らかにするために,鉱物記載を主とした分析を行った.本試料には堆積岩と火成岩が混ざった組織を持つ岩石が見られ,混成岩とした.主な岩相は苦灰岩との混成岩,珪岩,頁岩との混成岩,Platreefの粗粒輝岩と輝岩である.このうち珪岩以外の岩相において,直方輝石の粒間や蛇紋石中にパッチ状や鉱染状に磁硫鉄鉱,黄鉄鉱,黄銅鉱,ペントランド鉱を主とする多量のBase-Metal Sulfides(BMS)が見られた.苦灰岩との混成岩では,岩相全体でごく少量であった単斜輝石が多く,強い蛇紋石化を受け,黄鉄鉱が多くみられた.頁岩との混成岩にみられる頁岩は一部堆積構造を残し,雲母の仮像とみられる緑泥石がみられた.SEM-EDS,EPMAによるPlatinum Group Minerals(PGM)の記載について,苦灰岩との混成岩ではsperrylite(PtAs2)が黄鉄鉱のリムにみられることが多く,頁岩との混成岩ではfroodite(PdBi2)が自形のCobaltite(CoAsS)- Gersdorffite(NiAsS)Solid Solution(CGss),紅砒ニッケル鉱(NiAs)とよく共生するが,BMSとはほとんど共生しない.苦灰岩との混成岩でみられた単斜輝石と蛇紋石は,苦灰岩と頑火輝石と水が反応した生成物と考えられる.頁岩との混成岩でみられたCGss,紅砒ニッケル鉱は自形であり,パッチ状を示す他の硫化鉱物と比較して晶出が早かったと考えられる.頁岩との混成岩でみられたCGssと共生するPGMは,よくCGssに内包されることからPGMがヒ素に富む硫化物メルトから晶出したと示唆される.PGMを内包するCGssの化学組成から,頁岩との混成岩でのNi-Co-PGE鉱化作用は約500℃~600℃で生じたと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は上記のとおり南アフリカ共和国ブッシュフェルド複合岩体北縁に位置するPlatreefにおけるPGE鉱床を主に研究した。今年度研究した試料においては、堆積岩と火成岩が混ざりあった「混成岩」を集中的に研究することによって今まで知られていなかったPGE鉱化作用について明らかにすることができた。また、バーバートン緑色岩帯においても変質鉱物の種類と金の濃度に相関があることが認められ、貴金属鉱化作用をもたらした熱水の性質について理解が進んだ。そのため、今年度の進捗について「おおむね順調に進展している」との判断を下した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度、PGE鉱床についてはヒ素含有鉱物の詳細な分析と合わせてMg同位体比の分析を行い、熱水の起源を推定する。Au-Sb鉱床についても苦灰石などのMg含有鉱物を用いたMg同位体比分析を行い、同位体地球化学的観点から起源を推定する。これらの成果と、これまでに得られた岩石学・鉱物学的成果を統合し、貴金属鉱化作用をもたらした熱水の性質と起源を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた地球化学的分析(Sr-Mg同位体比分析、微量元素分析)が試料調製遅れのために少し遅れており、次年度に持ち越しとなった。そのために今年度の予算が少し余ったが、次年度はこれらの分析を迅速に実行し、論文作成のためのデータ収集に務める予定である。
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