研究実績の概要 |
ベトナム戦争中に散布された枯葉剤に含まれたダイオキシンによる健康影響を明らかにするため、 ① 2008年より追跡中の小児約100名が二次性徴の時期を迎える(2020年12歳)【コホートⅠ】 ② 安定した評価を得るために、①と同年齢の小児を両地区各50名新規に追加【コホートⅡ】 両集団の全対象者より血液中のステロイドホルモンとダイオキシンを測定し、男児は精通時期や睾丸サイズ、女児は初潮時期等の二次性徴に関する身体計測調査を実施する。 ③ 汚染地区では低体重児が多いが、先行研究では対象者数が限られていたため、汚染地区と対照地区で、2020~2021年の1年間に生まれた各3,000名程の全出生児を対象に、低体重児の出現率を比較し、さらに、その中の一部を抽出して、母親の母乳中DXNと母児のステロイドホルモンを測定し、低体重児との関連を明らかにする【コホートⅢ】ことが本研究の目的である。 しかし、2020年以降Covid-19流行のため、訪越ができていない。そこで、2021年は【コホートⅠ】の追跡調査で、2017年に採取し冷凍保存中の血清中ダイオキシン濃度を測定した。その結果、依然として枯葉剤非散布地区の同年代の小児と比較して汚染地区の小児の血清ダイオキシン濃度は有意に高値を示した。また、対象者の母親の母乳中ダイオキシン濃度(2008年採取)と比較した結果、いくつかの6塩化または7塩化の同族体(1,2,3,4,6,7,8-HpCDD,1,2,3,4,7,8-HxCDF,1,2,3,6,7,8-HxCDF,1,2,3,4,6,7,8-HpCDF)では有意な相関を示したが、5塩化の同族体(1,2,3,7,8-PeCDD,2,3,4,7,8-PeCDF)では有意な相関は認めなかった。 これより、汚染地区の小児は乳児期の母乳やその後の食物等を介してダイオキシン暴露を受けていることが示唆された。
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