本研究は天然緑簾石族鉱物から見出した結晶性の低下現象の新たな発生機構を提案した。本現象は捕捉困難だが,短周期原子配列に着目し,偏光ラマンスペクトル解析を適用することで現象の実態が「原子配列の周期性に乱れがない同方位を持つ結晶子が断片化し,それらの境界領域である粒間相の結晶性が低下した状態」であることを把握し,さらにその原因が鉱物に含まれる元素の原子結合状態,結晶構造中のOH基の無秩序配向と配位多面体の変形度の相互作用によると結論付けた。さらに天然緑簾石族鉱物31試料のラマンスペクトル解析結果に基づき,特定のピーク位置から鉄含有量を精度よく見積もる汎用性の高い関数を提案した。
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