研究課題
当初、平成21年度の計画として構想したものを、ほぼ完全に遂行した。6部門のそれぞれで、研究実績の概要は、つぎのとおり。第1部門:全体研究。主たる5省庁が有機的に連携して、統一的な内政体制を形成する論理を探索した。A・ギデンズ『国民国家と暴力』、T・H・マーシャル『シティズンシップと社会階級』、U・ベック『危険社会』から多くの示唆をえた。第2部門:警察庁の社会史研究。敗戦から1954年の警察庁発足あたりまでの政治警察、市民警察の社会中を分析した。主要な論点は、この時代に左翼革命が防止され、体制が維持されるために、政治警察がどのように働いたかにあった。第3部門:防衛庁・自衛隊の社会史研究。1950年、警察予備隊発足。52年、保安隊に改編。54年、自衛隊にふたたび改編の過程をあきらかにした。それらの政治的利用の回避は、内務官僚の主導によっておこなわれた。54年防衛庁発足、文民統制の試行。第4部門:自治省の社会史研究。これは主として、地方自治庁、自治庁時代の社会史研究であった。当時の自治庁の大きい行政課題のひとつとして、固定資産税の改革があった。ほかに電気ガス税、料理飲食等消費税の改正問題をも研究した。第5部門:建設省の社会史研究。1947~60年の戦災復興から経済成長政策としての住宅政策が軌道に乗る時代を解明した。1948年、建設省が発足すると、翌年、同省に住宅局が設置された。これは、かつて内務省にいた建築住宅官僚の宿願の実現であった。第6部門:厚生省の社会史研究。1945~60年前後の時代、厚生行政は生活保護による救貧政策を機軸とした。しかし、1955年の国勢調査は人口の高齢化を予測させ、厚生官僚たちは、60年前後に国民皆年金・皆保険の体制を形成した。
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年報社会学論集 22号
ページ: 1-9