研究課題/領域番号 |
21244001
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊吹山 知義 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (60011722)
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研究分担者 |
佐藤 文広 立教大学, 理学部, 教授 (20120884)
桂田 英典 室蘭工業大学, 工学部, 教授 (80133792)
若槻 聡 金沢大学, 数物科学系, 助教 (10432121)
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キーワード | 整数論 / ジーゲル保型形式 / 跡公式 / 次元公式 / ヤコービ形式 / 微分作用素 / 超特異アーベル多様体 / ゼータ関数 |
研究概要 |
平成23年10月31日から11月5日まで第14回整数論オータムワークショップ「簡約理論とその応用」を研究協力者、渡部隆夫とともに主催し、ドイツ、フランス、アメリカの研究者4名を含む専門家31人の研究討論を行った。研究代表者は一般の対称管状領域における保型形式の消滅のフーリエ係数による特徴づけについて、一般的な定理を発表した。集会では、保型形式理論における古典的な基本領域ないし、ボレル・ハリシュ・チャンドラの理論を具体的に記述することの重要性について共通認識を持つことができ、今後の研究の進展が期待される。また、オマーン王国での研究集会に科学委員会メンバーとして参画し、日独オマーンの数学研究交換に寄与した。個別の研究では2次シンプレクティック群のジーゲル保型形式とそのコンパクト実形上の保型形式の間の対応について、中間パラホリック群での記述が30年近く懸案であったが、このほど数値実験と次元比較による正確な予想を与えることができ、伊原康隆のコンパクト実形で固有値の重複度が2になるらしいという1963年の実験結果の意味を初めて明快に説明した。その他、レベルが平方因子をもたないパラモジュラー群のカスプ形式に対してもコンパクト実形などとの比較予想(北山と共同)、トリプルL関数に関する特殊値の明示式と3次ジーゲル保型形式の合同(桂田、Poor, Yuenと共同)、ジーゲル保型形式上の微分作用素の明示的公式(兵庫と共同)、対角成分への制限で保型性を保つ微分作用素の決める母関数の代数性の拡張などを行った。以上に関連して代表者は5編の論文を出版し、リュミニー、ボン、オマーンなどの国際会議での招待講演などを行い、外国人研究者6名を招聘し、幅広い領域について、研究を進展させた。各分担者も業績表に見るごとく、多様に研究を発展させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中心的な課題のひとつの明示的跡公式は、多くの共役類についての個別の研究が必要であり、非常に複雑であって、全体的な解決には今なお時間がかかると思われる。しかし、今年度に得た、中間的パラホリック群に関する新予想は、これらの共役類の寄与がどのように記述されるべきかの目安(公式に対する記述のされ方の予想)を与える点で、非常に示唆的であり、今後の進展のカギになると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度では東日本大震災や原発事故等の影響で、協力を必要とする外国人研究者の来日が若干予定通りでなかった点があるが、こちらから出向いたりメール連絡等で研究討論を進め、支障が最小限にとどまるようにできた。外国人の反応も徐々に平常にもどりつつあり、今後は招聘して直接深い研究討論を実行できるものと思う。テーマは重層的であるので、跡公式のみを研究するのではなく、関連する周辺事情を明示的に記述することが大いに助けになる。この点、従来通り国内外の多数の研究者と直接会って討論連携しながら研究を進めたい。
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