本研究は、「公的」な機関(立法府、行政府など)や主権国家の法制度ないしは領域を超越して展開する「非公的」な政治空間に着目し、そこで繰り広げられる政治主体の営為を分析することで、今日の東アラブ地域政治の実態を解明することを目的とする。最終年度にあたる今年度は、初年度(平成21年度)および第2年度の研究方法を踏襲し、「公的」、「非公的」な政治空間における政治主体の動静に関して引き続き情報収集・整理を行い、ウェブサイトなどで随時公開した。 この作業と並行し、2011年1月にチュニジアでの政治変動に端を発したいわゆる「アラブの春」が東アラブ地域の政治、とりわけ同地域の「非公的」な政治主体の営為にいかなる影響を及ぼしたのかを解明するための研究を進めた。2011年3月半ばにシリアで発生した反体制運動は、周辺アラブ諸国や西側諸国の執拗な介入により、本研究会終了時点においてもなお余談をゆるさない状況が続いている。こうした事情を踏まえ、「アラブの春」をめぐる研究は、錯綜する情報の収集・整理と、ウェブサイト「シリア・アラブの春(シリア革命2011)顛末記」を通じた情報公開を重点化した。FacebookおよびTwitterの専用ページとリンクを構築した同ウェブサイトは、前者に100人以上、後者に450人以上の利用者を獲得し、東アラブ地域の政治情勢に関する研究成果の開示と社会還元に多いに貢献した。 上記の諸活動と並行して、2011年7月(東京)と2012年2月(京都)において研究会合を開き、研究代表者・研究分担者、そして研究協力者間で研究進捗状況報告、収集資料・データの解析結果検証などを行った。また2011年10月、11月に研究協力者がレバノンなどで現地調査を行い、同国の研究者・有識者との意見交換および関連資料・データの収集を行った。
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