平成23年度の活動実績は以下のとおりである。 民事法グループでは、CSRに連なる制度や法思想を探り、CSRの成立の契機の1つを明らかにする研究が行われた。たとえば、後掲の小野論文は、おもに19世紀における重要な法思想を検討し、19世紀には、なお部分的には、倫理の自律的規制が中世的な古き良き法の伝統の中に残存していたが、末期には、国家法万能の時代が到来し、かつそれが不十分なものとなった過程を描き出している。そのほか、組織の社会的責任に関する国際規格であるISO26000の策定に深く関わった松本が、『ISO26000実践ガイド』を公表するなど、CSRの実践に貢献する業績の公表や活動を行った。 企業法グループでは、「企業は社会において存在し、さまざまなステークホルダーとの関係において活動していることを重視する企業観」が広がりを見せていることを視野に入れつつ、過去2年間の検討を基礎に、「会社は誰のものなのか」という基本問題に立ち返り、現在進行中の会社法制の見直し作業なども視野に入れた研究を行った。その成果の一部として、後掲の仮屋論文がある。 環境法グループでは、いまだに対策が進んでいないナノ物質に関する環境リスクへの対応について、ドイツやEUの対応を参考に、行政と事業者との役割分担を検討するとともに、ドイツにおける「保証国家」の観念を手掛かりに、現代国家における公的任務の遂行における国家と事業者との協働のあり方の検討も行われた。その成果の一部として、後掲の山田論文がある。 労働法グループは、メンバーが長期の入院を余儀なくされたこともあり、残念ながら、十分な研究を行うことができなかった。
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