研究概要 |
本研究計画は,多元的法秩序間の調整メカニズムとして,制度化された恐らく唯一の事例と思われる「ヨーロッパ経済領域(European Economic Area)(以下ではEEAと略称する)」の研究を課題とし,EU法・国際法研究への寄与を目指すものである. 本年度も,初年度の研究計画の二つの柱,即ち,第一に,研究の基礎となる文献・資料の系統的調査・収集,第二に,共同研究者相互間での討議による問題意識・研究手法の明確化作業を継続した. 第一の柱は,本研究のように未開拓の研究領域においては,系統的な文献・資料の収集が不可欠であることに基づく.そのため系統的な検索手段が何よりも必要であるにも拘わらず,EFTA・EEAに対する商業ベースの需要が必ずしも大きくないためか,初年度にはそのような系統的なEEA文献,EFTA判例評釈文献等の検索手段を見出すことができなかった.その後,EFTA加盟国のリヒテンシュタインからモノグラフが刊行されていることが判明したが,国内に全く所蔵が無いため,ヨーロッパの国際機関の図書館でコピーを入手する等,関連文献の入手に努めた. 第二の柱については,木を見て森を見ないEEA研究にならないようにするために,まずEEAの制度枠組自体の研究を継続することが重要であるため,具体的には,EEAの制度枠組形成の沿革,組織運営の実態等についての研究を継続した.EFTA裁判所のBaudenbacher長官のThe EFTA Court in Actionが今年刊行されたことも幸いであった.これらの基本的な理解は,共同研究者が共有する必要があるため,研究会における討議を通じて,研究すべき論点を明確化するとともに,EFTA,EEAの制度枠組みに対する理解を深めることができた.
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