研究課題
博物館に所属する研究組織スタッフにより旧食虫類の標本の恒久的収蔵が図られた。分担者横畑は国内産トガリネズミおよびモグラ類を用いて、四肢運動機能の形態学的精査を進め、分担者甲能はトガリネズミ類の化石資料に関して、形態形質の記載とともに機能形態学的検討を進めた。ユーアルコントグリレス類とユーラシア獣類における頭骨変異の解析は、分担者本川・川田によって推進され、精度の高い骨形態学を進められた。咀嚼機構については、とくに川田によるペトナム産モグラを用いた歯牙の形態解析が進捗した。篠原は、穴居性適応に伴って変化していく視覚器の形態を検討し、視覚器における遺伝子発現の分子進化学的変遷を精査している。代表者遠藤らによる特筆される実績として。マダガスカル産テンレック類の皮膚構造の機能的特化の検討が挙げられる。これは旧食虫類からアフリカ獣類へ移行されたテンレック類における発音装置としての皮膚構造の特殊化であり、旧食虫類の収斂進化に興味深い情報基盤を与える結果であるといえる。また佐々木らにより、比較対象として、偶蹄類、奇蹄類や食肉類のようないくつかの真獣類群を取り上げ、皮膚や咀嚼、四肢運動器のシステムについての機能形態学的比較を、旧食虫類との間で進めた。研究協力者木村順平(ソウル大学)により、雌性生殖器を中心に形態学的データの蓄積が図られた。非接触式レーザースキャンや、三次元連続切削によるデジタル化、CTスキャンなどを導入し、骨格標本や生殖器の軟部構造について、詳細な定量的比較検討を開始したが、本年度はとくに頭蓋の発生過程における骨化の程度が、旧食虫類を中心とした真獣類の分岐関係に大きな示唆を与えることが明確になり、大変興味深いというデータが得られつつある。頭蓋骨化の詳細は、多系統であることが証明されている旧食虫類における、分岐に関する新たな理論化に結びつく可能性が高く、今後の重要な課題として浮かび上がった。
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