薬物送達システム(DDS)においては、目的成分を目的部位に的確に送達するための材料設計が必要である。経口摂取においては胃で分解されずに、小腸や大腸に送達可能な壁材を利用することになる。小腸送達システムについては多くの実用化例があるが、大腸送達システムは確立されていない。本研究は難消化性糖類を壁材とする新規大腸送達システムの構築、難消化性多糖類の微粉砕化技術の開発、またビーズミル等による微粒化や界面工学的処理により、親水性部と疎水性部を有する脂質のマイクロ分散系の作出と、包含する機能性成分が胃や小腸で分解吸収を受けずに大腸まで送達されるシステムの構築を目指した。キノア由来のスターチを用いることで、スターチ粒子を含有する水中に安定な油滴分散系を得ることができた。酪酸を経口投与して直接大腸に送り届ける手法として、酪酸・キトサン混合液で調製した固形物粒子を、常温で固化して油をカプセル化する方法が有力であることを示した。健康を促進する成分として注目を浴びている食物繊維の加工研究として、微細化を試み、微高pHの水溶液でニンジンを煮沸処理し、粉砕することでサブミクロンの大きさの粒子を作製できることが示された。
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