研究課題/領域番号 |
21380111
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
久保 智史 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (50399375)
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研究分担者 |
橋田 光 独立行政法人森林総合研究所, バイオマス化学研究領域, 主任研究員 (40353809)
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キーワード | リグニン / イオン液体 / 分解速度 / フェノール性 / 非フェノール性 / グアイアシル / シリンギル / スレオ / エリスロ / DMSO / エノールエーテル |
研究概要 |
本年度は、リグニンモデル化合物の化学構造とイオン液体中での分解性の関係を中心に検討した。リグニンの代表的な結合様式を有す8種類の(A環)-β-O-4-(B環)型モデル化合物を合成し、本年度は7種類のモデル化合物についてイオン液体中での加熱分解実験に供した。リグニンモデル化合物の分解速度は、イオン液体の種類により異なり、木材の液化溶媒あるいは良溶媒として報告されているイオン液体中でより速い傾向を示した。モデル化合物の構造の違いによる分解速度の違いは以下にまとめられる。1)フェノール性モデル化合物の分解速度は非フェノール性に比べて速い、2)A環にグアイアシルあるいはベラトリル構造を持つモデル化合物の分解速度は、B環にシリンギル構造を持つものがグアイアシル構造を持つものに比べて速い、3)エリスロ型モデルの化合物の分解速度がスレオ型に比べて速い。イオン液体中でのこれらリグニンモデル化合物の構造安定性の結果は、実木材の樹種による液化あるいは溶解速度にも関係していると考えられる。また、モデル化合物の分解速度に対するイオン液体の濃度の影響を調べるために、A、B環共にグアイアシル構造を持つフェノール性モデル化合物の分解をDMSOで希釈したイオン中で行った。その結果、イオン液体の濃度が10w/w%以上の時の分解速度は、イオン液体単体中での分解とほぼ同じであった。イオン液体中での同モデル化合物の分解では、脱水反応によりエノールエーテル型の化合物を1次生成物として与える。ごく少量(0.25w/w%)のイオン液体を加えたDMSO中での分解実験でも同じエノールエーテル型の化合物が1次生成物として得られた。木材の溶解速度は少量のDMSOを加えても影響を受けないと報告されている。本実験で得られたモデル化合物の分解、構造変化が、実木材の溶解にも関係していると推測している。
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