研究概要 |
昨年度、ノックアウトマウスを用い、PI3Kγ欠損により、肥満状態でマクロファージの脂肪組織への浸潤とインスリン抵抗性が改善することを示し、PI3Kγの活性抑制が糖尿病治療に応用出来る可能性が示された。そこで、今年度は、特異性は高くないものの、PI3Kγ阻害剤として知られているAS-605240(関節リウマチやループス腎炎などのマウスモデルで病態の改善に効果があったことが報告されている(Camps et al. Nat Med 2005, Barber et al. Nat Med 2005))を、肥満動物モデルに投与して、抗糖尿病作用とマクロファージの浸潤などを検討した。 (a)HD飼育開始と同時に野生型マウスにAS-605240を連日経口投与し、糖脂質代謝、インスリン感受性を検討した。週齢をおって、随時血糖値、インスリン値を測定し、AS-605240投与開始2ヶ月後に、インスリン負荷試験(ITT)、糖負荷試験(GTT)を施行した。AS-605240の間、随時血糖値がコントロールに比して有意に低下し、ITT, GTTも用量依存性に有意に改善した。 (b)ob/obマウスにAS-605240を連日経口投与し、糖脂質代謝、インスリン感受性を検討した。AS-605240投与により、随時血糖値、インスリン値はつねに低値を示した。また、AS-605240投与開始2ヶ月後に、インスリン負荷試験(ITT)、糖負荷試験(GTT)を施行した。ITT,GTTもAS-605240投与により用量依存性に有意に改善した。 (c)(a)および(b)において、脂肪組織へのマクロファージ浸潤を免疫染色やマクロファージマーカーの発現定量、FACS解析などで検討した。いずれも場合もAS-605240投与により用量依存性にマクロファージ浸潤特にM1マクロファージの有意な減少を認めた。
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