研究概要 |
カルマンフィルタを用いて,3次元動画像刺激の任意時点の感性評価値を累積的評価値から推定するシステムを構築した.このとき,現時点と過去時点の刺激間の相互作用の有無の判定が重要になるが,加法形モデルの独立性の条件に注目して判定条件を提案した.本手法を建物壁面の色彩列評価に適用した結果,次の知見が得られた. 1.被験者は建物壁面色彩の統一性を重視する群(統一性重視群)と重視しない群(統一性非重視群)に分類され,統一性重視群では相互作用の考慮が必要であり,統一性非重視群では不要である. 2.統一性重視群では暖色壁面を連続させると評価に相乗効果が見られるため,暖色壁面を一並びの連続した列として考えるべきである.統一性非重視群では,壁面列の並びにこのような拘束はない.しかも,暖色壁面の連続は最終ピリオドで評価を降下させるため,トーンや形態に適当な変化を与えることが望ましいと考えられる. 感性評価値のロバスト性を調べることを念頭に,服飾刺激の一対比較による選好判断時の迷い度合いと眼球運動の連関性について検討した.一対刺激として,トップスの色の好嫌の組み合わせによって,好-好ケース,好-嫌ケース,嫌-嫌ケースを設定した.その結果,次の知見が得られた. 1.いずれのケースにおいても,回答時間の影響力が大きく,迷い度合いが大きくなるほど,回答時間は長くなる. 2.迷い度は,嫌-嫌ケースが他の2ケースに比べて有意に大きい.好-好ケース,嫌-嫌ケースともに,迷うと両方のモデルをゆっくり比較するが,前者は好きな方を頻繁に見るのに対し,後者は決めかねて最後に両者を見られる位置で視線が停留する.好-嫌ケースでは,迷うと両方の刺激を均等に何度も見比べる傾向にある.
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