研究概要 |
3次元動画像刺激の評価に対して評価者の意識構造分析を行える時系列解析手法を構築するために,相互作用モデル(重み付き加法形モデル)に対する予測式の適用条件の抽出を公理的測定論の枠組みで検討した.さらに,都市景観評価において壁面色彩の統一性を重視する被験者群(統一重視群)と重視しない被験者群(統一非重視群)が存在することが確認されているが,両群に対して好ましいと感じられる都市景観の提案に関する検討を行った.具体的には,既に両群ともに秩序のある形態変化,すなわち,街区内では建物形態は一定で,街区間でのみ変化するような景観を好む傾向があることが確認されているので,この条件の下に「全街区で屋根面の見え方に統一性を与えると好ましい景観になる」という予想の検証を行った.その結果,次の知見が得られた. 1.順序亜群(ordered groupoid)に対して,左アルキメデス性と擬群(quasigroup)で使われている中心化(centering)の概念を導入することにより,重み付き加法形モデルに対する適用条件が抽出された.これは3つの代数的特性として記述されるので,時系列刺激の時点刺激間に何らかの2項算法を仮定されるならば,モデルの適用妥当性を考察できることになる. 2.屋根面の見え方を統一的にすると統一重視群には好影響を与えるが,統一非重視群には逆効果を招くことが分かった.これは統一重視群と非重視群の評価構造の違いに起因する.すなわち,統一重視群は屋根面を統一させた形態変化を「統一性の維持」と捉えるのに対して,統一非重視群では「変化が少ない景観」と捉える可能性がある.
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