研究概要 |
ある広領域に含まれるm個の地域i=1,…,mについて,事故数や疾病数などのデータX[i]が,地域iのスケールを表す尺度μ[i]とともに得られているとする.事故や疾病が集積する点(ホットスポット)においては,x[i]はcμ[i](cは比例定数)よりも有意に大きい値をとる.またこれらのホットスポットは単一地域にとどまらないでクラスターをなす場合が多い.そのため,隣接する地域を併合した値もスキャンの対象とし,対応するスキャン統計量を求め,多重性調整p値によって有意性を判定する必要がある. この多重性調整p値の計算のためには,ホットスポットが存在しないという帰無仮説のもとでの同時分布の計算を行うことが必要である.しかしこの計算は高次元の積分(和分)となるため,定義通りに数値計算を行うことは現実的ではない.またホットスポットという稀な事象の確率を計算するためには,素朴なモンテカルロシミュレーションでは精度を出すことができない. 本研究では,このような多次元数値計算を高速に行うために,マルコフ性に基づく逐次数値積分や逐次モンテカルロ法の利用を試みている.スキャンウィンドウとよばれる地域の隣接関係により無向グラフを定義し,そのグラフをコーダル拡大することによりマルコフ性が適用可能な形に持ち込むことを試みている.本年度は,地理情報で定まるグラフのコーダル拡張を用いて,条件付および無条件p値を数値積分ならびに逐次モンテカルロ法で求めるためのアルゴリズムを開発した.
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