マスト細胞と活性化T細胞の相互作用は喘息時の炎症を悪化させ慢性化リモデリングに関与することが示唆されている。そこで活性化T細胞によるマスト細胞の活性化機構及びフラボノイドによるその抑制効果を検討した。これまでに、活性化T細胞膜刺激がHMC-1ヒトマスト細胞のNF-κBシグナル伝達経路を活性化することを明らかにしており、今年度はIκBα阻害剤(BAY 11-7082)により炎症性サイトカイン(TNFα、IL1β)及びT細胞との接着に働く接着分子ICAM-1の遺伝子発現が抑制されることから、NF-κBシグナル伝達経路がマスト細胞における遺伝子発現及び細胞間の接着に重要な役割を担うことを明らかにすると共に、フラボノイドのフィセチンがこの経路を抑制することを解明した。またSrcファミリーチロシンキナーゼのSyk阻害剤(BAY 61-3606)が活性化T細胞膜で誘導されるHMC-1細胞の細胞伸展(細胞遊走)や遺伝子発現を抑制することから、チロシンキナーゼSykが活性化T細胞によるHMC-1細胞の活性化に関与することが示された。更に、HMC-1細胞の細胞表面にTNF受容体ファミリーCD40が発現していること、及び活性化T細胞膜刺激によりCD40が脂質ラフトに移行することを明らかにした。現在、フィセチンでの脂質ラフトの形成抑制効果を検討している。また、喘息モデルマウスの肺胞洗浄液中の各種細胞数の変化等の検討を行っている。
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