昨年度までに、活性化T細胞膜刺激によるHMC-1ヒトマスト細胞の活性化において、フラボノイドのフィセチンは脂質ラフトの形成を阻害しないが、NF-κB及びMAP kinaseの活性化を抑制することを明らかにした。そこでフィセチンがNF-κB及びMAP kinase上流のシグナル伝達経路に及ぼす影響を検討した結果、活性化T細胞刺激によるHMC-1細胞の活性化にはAkt(Ser473)のリン酸化が関与し、フィセチンがこれを抑制することを明らかにした。またフィセチンはHMC-1細胞の伸展を抑制するが、Aktのリン酸化に関わるPI3 kinaseの特異的阻害剤LY294002はHMC-1細胞の伸展を抑制しなかった。このことから、フィセチンはPI3 kinaseを介さずにAkt(Ser473)のリン酸化とそれに続くNF-κB及びMAP kinaseの活性化を抑制して、マスト細胞の活性化を抑制すると考えられた。またオブアルブミン誘導喘息モデルマウスにフィセチン及びケルセチンをそれぞれ自由摂取させて、気道リモデリングの抑制効果等を検討したが、明らかな効果は認められなかった。そこで、活性化T細胞によるマスト細胞の活性化が関与する異なる動物モデルとして、NC/Ngaマウスを用いてダニ(Dermatophagoides farinae)抗原の連続塗布による皮膚炎モデルマウスを新たに製作した。フラボノイドのうち、in vitroにおいてマスト細胞活性化抑制効果が最も効果の高かったフィセチンを0.1%の割合で飼料に添加して、皮膚炎モデルマウスに自由摂取させ、皮膚炎の抑制効果を観察した結果、フィセチン摂取群では皮膚炎を発症したコントロール群と比べて、発赤、擦傷、痂皮、浮腫、皮膚硬化等の症状悪化の進行が緩やかになり、試験終了後の血中total-IgE抗体価がやや低下することが明らかになった。
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