研究概要 |
前年度の研究によって,既存の陶邑焼土試料を切断し,試料を回転させながら段階交流消磁を行うノウハウが確立できたので,本年度は陶邑試料を採取年代や地域を考慮しながら順次測定を行った.また,より効率的に交流消磁を行うために,回転装置の改良を行った. 測定したのは,(1)高蔵寺地区から採取されたTK-117(S331-360),610年±10年,(2)栂地区のTG-43-II(S1037-1061)およびTG-43-III(S1003-1030),年代はいずれも445年±10年であった.これらの試料は,窯体の側壁なども含めて様々な位置から多数採取されており,採取位置ごとの特徴など検討するのに適した試料と考えて選択した.段階交流消磁の結果は,多くの試料は2次磁化がほとんど含まれていなかったが,一部の試料には無視することができない2次磁化が見いだされた.とくに窯壁部の試料には2次磁化が大きなものが多かった.また,消磁後の安定な磁化方向が,当時の地球磁場方向として許容できる範囲を超えているものも少なからずあった.これらの試料の採取位置は窯壁部やあるいは,発掘報告書から乱された可能性が推定できる箇所が多かった. 今年2/21-22に,代表者・分担者・連携研究者など15名が岡山理科大に集合し,これらの結果を検討した.さらに,今後の研究の方向性について議論し,23年度の研究計画について具体的な議論を行った.
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